水戸八景(作者:德川齊昭)を訪ねる

水戸八景         [作者]德川齊昭

 雪時嘗て賞す 仙湖の景   雨の夜 更に遊ぶ青柳の頭
 山寺の晩鐘 幽壑に響き   太田の落雁 芳洲を渡る
 霞光爛漫たり 岩船の夕   月色玲瓏たり 広浦の秋
 遙かに望む 村松晴嵐の後  水門の帰帆 高樓に映ず

水戸八景を訪ねる

この3月吟友と1泊2日で、水戸偕楽園のうめ祭りに合わせ、奥羽三大古関の一つ「勿来の関」を経由し詩吟で馴染の水戸八景を訪ねた。
作者の德川齊昭は天保4年(1833年)水戸藩領内の景勝地として、北宋の瀟湘八景に倣って次の八ヶ所を選び、その場所に斉昭自筆の隷書で刻んだ漢詩と和歌が残されている。(律詩とは順位不同)

(1)青柳夜雨 ―水戸市
【和歌】雨の夜に舟を浮かべて青柳の木の間を渡る風の涼しさ

(2)太田落雁 ―常陸太田市
【和歌】さして行く越路の雁の越えかねて 太田の面にしばしやすらう

(3) 山寺晩鐘 ―常陸太田市
【和歌】つくづくと聞くにつけても山寺の 霜夜の鐘の音ぞ淋しき

(4)村松晴嵐―東海村
【和歌】真砂地に雪の波かと見るまでに 塩霧晴れて吹く嵐かな

(5)水門帰帆―ひたちなか市
【和歌】雲のさかい知られぬ沖に真帆あげて みなとの方によつる釣り舟

(6)巌船夕照―大洗町
【和歌】筑波山(筑波根)あなたは暮れて岩船に日影ぞ残る岸のもみじ葉

(7)広浦秋月―茨城町・涸沼・
【和歌】大空の影を映して広浦の 波間をわたる月ぞさやけき

(8)僊湖暮雪―水戸市・偕楽園
【和歌】千重の波よりてはつづく山々を こすかとぞ見る雪の夕暮れ

(1)~(8)までの齊昭の漢詩(普Ⅱ69、律詩水戸八景を参照下さい)と、ここに記載した和歌とを併せて鑑賞すれば、
なお一層詩情が深まるものと思います。
また、偶然にも今年の優秀吟の合吟課題吟に採られていたのも何かの巡り合わせかと思います。
                                            富沢教場 山根春岳

2022年06月18日